最後の予備試験

平成31年の予備試験を最後の予備試験とするために再現答案を晒すブログです。

行政法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

1本件勧告について

 「行政庁の処分その他公権力の行為に当たる行為」とは、公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、その範囲を確定することが法律上認められているものをいう(行政事件訴訟法3条1項)。そして、処分性が認められるかは、①公権力性、②直接具体的法的効果の有無で判断される。

 まず、本件勧告は、Y県消費生活条例に基づきY県知事が行っているから、①公権力性は認められる。

 では、②直接具体的法的効果性は認められるか。この点、Y県は、本件勧告には強制力がないし、「勧告に従わなかった場合」や「公表がされた後も不適正な取引行為を継続した場合に、当該事業者に罰則等の制裁を科する規定は存在しない。」ことから、②は認められないと反論することが考えられる。

 しかし、後述のように本件公表に処分性が認めるところ、公表は勧告に従わない時になされるものであるから、勧告は公表の前提条件である(Y県消費生活条例(以下、条例とする) 50条)。したがって、本件勧告は、直接国民の権利義務を形成するといえ、②直接具体的法的効果性が認められる。

 よって、本件勧告に処分性が認められる。

 Xは、以上のような主張をすべきである。

2本件公表について

 本件公表に処分性が認められるか。まず、①公権力性は認められる。

 では、②直接具体的法的効果性は認められるか。この点、公表によって、Xの売上が落ちる可能性があり、経営に深刻な影響が及ぶ可能性がある。また、公表によってXの信用が失墜すれば融資が停止される可能性があることから、直接国民の権利義務を形成するといえ、②直接具体的法的効果が認められると解する。

 これに対しY県は、いずれの可能性も事実上の効果にすぎないと反論することが考えられる。

 しかし、あくまでも公表がきっかけとなるのであるから、②直接具体的法的効果が認められることに変わりはないといえる。

 よって、本件公表に処分性が認められる。

 Xは、以上のような主張をすべきである。

第2設問2

1 まず、Xの従業員が、(ア)「水道水」「は健康に有害ですよ。」、(イ)「人助けだと思って買ってください。」と述べたことは、条例25条4項にあたらないとXが主張することが考えられる。

 これに対し、Y県は、(ア)は、「消費者を威迫して困惑させる方法」にあたり、(イ)は、「心理的に不安な状態」にあたると反論することが考えられる。

 この点、水道水に含まれる塩素は多量に摂取すると体に有害であることから、(ア)は、「消費者を威迫して困惑させる方法」にあたらないといえる。また、「人助けだと思って買ってください。」と述べても相手方が不安な気持ちになるとは限らないから、「心理的に不安な状態」にあたらないといえる。

2 次に、Xは、本件の勧誘をしたのは従業員の一部にすぎず、Xの行為とはいえないと主張することが考えられる。

 これに対し、Y県は、Xには従業員の監督責任があるから、従業員の一部の行為でもXの行為とみなされると反論することが考えられる。

 この点、常に従業員の一部の行為をXの行為とみなすのは不公平であるから、本件勧誘は、Xの行為とはいえない。

3 さらに、Xは、従業員に対する指導教育をしたことから、今後不適正な取引行為はないと主張することが考えられる。

 これに対して、Y県は、指導教育をしたとの証拠はないと反論することが考えられる。

 この点、証拠がないのは、Xに証拠を提示する機会が与えられなかったためであると再反論することが考えられる(条例49条)。

 Xは、本件勧告は違法であることについて、以上のような主張をすべきである。

                                     以上

評価:F

 

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