最後の予備試験

平成31年の予備試験を最後の予備試験とするために再現答案を晒すブログです。

刑事訴訟法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

1下線部①について

 本件行為は、所持品検査として適法か。まず、所持品検査は、職務質問の効果をあげる上で有効性が認められるから、所持品検査は、職務質問に付随して認められると解する(警察官職務執行法2条1項)。

 もっとも、所持品検査は、任意であるから原則として相手方の承諾が必要であり、承諾がない場合には、必要性、緊急性、相当性が認められる限りで所持品検査が認められると解する。

 本問では、「凶器を使用した強盗等犯罪が多発してい」たことから、凶器等を探すため、必要性、緊急性が認められる。

 また、Pは、「甲のシャツの上からへそ付近を右手で触った」だけであり、服の中に手を入れたりしていないことから、相当性も認められる。

 以上から、①の行為は適法である。

2下線部②について

 ②の所持品検査は適法か。まず、前述の通り、必要性、緊急性は認められる。では、相当性は認められるか。まず、「Qが背後から甲を羽交い締めにして甲の両腕を腹部から引き離」していることは、実質的に逮捕にあたる。さらに、「Pが、甲のシャツの中に手を差し入れて、ズボンのウェスト部分に挟まれていた物を取り出した。」という点は、捜索としての身体検査にあたる。したがって、令状主義に反する行為であるから、相当性は認められない。

 以上から、②の行為は違法である。

第2設問2

 本件覚せい剤は違法収集証拠にあたり証拠禁止といえ、証拠能力が認められないのではないか。

 まず、本件覚醒剤は、甲の現行犯逮捕と逮捕に基づく差押えによって得られたものであるが、これらはいずれも適法である(220条1項2号)。

 もっとも、所持品検査が違法であることから、かかる違法が承継されないか、違法性の承継が問題となる。

 思うに、手続きの早期安定から違法性が承継されないのが原則である。もっとも、①同一目的を有し、②一連の手続きといえる場合には、強い因果性が認められるから、かかる場合には例外として違法性の承継が認められると解する。

 本問では、Pは、「規制薬物等犯罪に関わる物を隠し持っている可能性があると考え」ていたから、薬物犯罪の犯人の検挙という①同一の目的を有していたといえる。また、所持品検査による覚醒剤の発見、現行犯逮捕、逮捕に基づく差し押さえは、②一連の手続きといえる。

 以上から、所持品検査の違法が、覚せい剤の差し押さえに違法性が承継される。

 では、本件覚醒剤は、違法収集証拠にあたるか。

 思うに、違法収集証拠にあたるかは、令状主義の潜脱する重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑止の見地から妥当でないといえるかで判断すべきと解する(199条、218条1項)。

 本問では、Qの行為は、実質逮捕といえ、またPの行為は、捜索の身体検査にあたるもので、かかる行為を所持品検査として行なっていることから、令状主義を潜脱する重大な違法があるといえる。また、本件覚醒剤を証拠として許容すると同じような所持品検査が繰り返される恐れがあることから、将来の違法捜査抑止の見地から妥当でないといえる。

 したがって、本件覚醒剤は違法収集証拠にあたる。よって、本件覚せい剤は、証拠禁止にあたるから、本件覚醒剤に証拠能力は認められない。

                                     以上

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