最後の予備試験

平成31年の予備試験を最後の予備試験とするために再現答案を晒すブログです。

刑事(法律実務) 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

 本件被告事件の目撃者であるW2は、犯行現場である「K駐車場の直ぐ隣の一軒家に住んでおり」、Aと「1秒ほど目が合っ」ており、AがW2の顔を覚えている可能性があり、また、K駐車場でAと会うことも考えられ、その際、AがW2を特定したり、W2の家を知り得る可能性もある。そうだとすると、AはW2に接触してAに有利な証言を依頼する可能性がある。そのため、裁判官は、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断した。

第2設問2

1 ①について

(1)イ

 321条3項に準ずる書面(316条の15第1項3号)

(2)ロ

 W2が説明する目撃等時の人物等の位置関係、現場の照度によっては、W2が目撃した人物がAであることについて見間違う可能性があり、甲8号証の証明力を判断するのに重要であることを明らかにすべきである。

2②について

(1)イ

 検察官が証人として尋問を請求した者(316条の15第1項5号イ)

(2)ロ

 より事件に近い時点での員面調書での供述と比較することにより、供述に変化がないかなど甲8号証の証明力を判断するのに重要であることが明らかにすべきである。

3③について

(1)イ

 316条の15第1項6号の供述録取書

(2)ロ

 W2以外の犯行目撃者の供述と比較することにより、W2が目撃した犯行状況と矛盾がないかなど甲8号証の証明力を判断するのに重要であることを明らかにすべきである。

第3設問3

 検察官は、証明予定事実を氏名不詳者と共謀の上をAとBが共謀の上と変更し、本件CDも被害品であることを追加する旨の証明予定事実を記載した書面を裁判所に提出し及び被告人又は弁護人に送付しなければならない(316条の21第1項)。

第4設問4

1小問(1)

(1)器物損壊について

 W2は、「本件自動車に近づいてその様子を見ると、同車の運転席側の窓ガラスが割れていた」と分かったのであるから、W2は、犯人が車の窓ガラスを割ったところは見ていないことから、W2の供述は間接証拠に当たる。

(2)窃取について

 W2は、「男が」「ティッシュペーパーの箱を2つ重ねたくらいの大きさの電化製品に見えるものを持って同車の運転席側のドアから降りて」きたと述べている述べているから、W2は犯人が窃取したのを直接目撃した供述といえ、W2の供述は直接証拠に当たる。

2小問(2)

 Bは、Aと共謀して本件自動車の窓ガラスを割って、本件カーナビを窃取したことを認めていることから、重複するW2の尋問は必要性がないのではないかと考えたためである(刑事訴訟規則208条1項)。

3小問(3)

 BはAと共犯者であり、共犯者同士では互いに罪のなすりつけの恐れなどBとAの利害は必ずしも一致していないことから、Bは証言を変える可能性がある。そのため、W2も尋問する必要があると釈明すべきである。

第5設問5

1刑事訴訟法上について

 公判前整理手続終結後に新たに証拠調べ請求するには、やむを得ない事由がなければならない(316条の32第1項)。では、本問では、「やむを得ない事由」があるか。この点、公判前整理手続終結後の8月28日にBはVに250万円を弁償し、9月15日にAの弁護人は、同領収書の写しを入手したため、公判前整理手続中に証拠調べ請求できなかった「やむを得ない事由」が認められる。

2弁護士倫理上について

 Aの弁護人は、当初Aは「器物損壊や窃取を行った事実はいずれもない。」「Aは」「K駐車場にはいなかった。」として、無罪の主張を行っていた。しかし、本件領収書の取調べ請求をすることは、Aの犯行を認めることになるから、「最善の弁護活動に努める」に反するかが問題となる(弁護士職務基本規程(以下規定とする)46条)。

 思うに、裁判の過程で無罪の主張より情状酌量を主張するほうが被告人に有利な場合も生じうる。このような場合には、「最善の弁護活動に努める」に反しないといえる。

 本番では、共犯者であるBが器物損壊及び窃盗を全て認めていることから、Aがこのまま無罪を主張すると反省の色が見えないとしてより厳しい刑が科せられる恐れもある。そこで、無罪の主張より情状酌量を主張するほうが被告人に有利な場合にあたる。したがって、「最善の弁護活動に努める」に反しないといえる。

                                  以上   

評価:A

 

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民事(法律実務) 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

1小問(1)

(1)Xの採り得る法的手段

 Xは、Aに対して売買代金債権の支払いを差し止める仮差押申立てという法的手段を採ることが考えられる(民事保全法20条1項)。

(2)手段を講じなかった場合の問題

 Yは、Aに対する売買代金債権「以外にめぼしい資産はない」ことから、AがYに80万円を弁済してしまうと、XがYに勝訴しても強制執行ができなくなってしまう。これに対し、仮差押の手段を採ることにより第三債務者に対し債務者への弁済を禁止する命令が発せられ、AのYに対する弁済を防止することができ、強制執行することができるようになるのである。

2小問(2)

 消費貸借契約に基づく貸金返還請求権及び貸金返還債務の履行遅滞に基づく損害賠償請求権

3小問(3)

 被告は、原告に対し、100万円を支払え。支払い済みまで年5分の割合による利息を支払え。

4小問(4)

 ①平成27年9月15日、XはYに100万円を貸し付けた。

 ② ①の契約の際、返済期日を平成28年9月30日とする合意をした。

 ③平成28年9月30日は経過した。

第2設問2

1小問(1)

 平成28年9月30日、貸金返還債務の履行として100万円を給付した。

2小問(2)

(1)(ⅰ)貸金返還債務と売買代金債務を相殺するとの意思表示を行った。

(2)(ⅱ)

ア結論

 本文の事実を主張することが必要である。

イ理由

 自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合には、自己の債務の弁済の提供をして、同時履行の抗弁権を消滅する必要があるからである(533条本文)。

第3設問3

 時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は相殺をすることができるところ、Yは本件カメラの売買契約日である平成19年10月1日にXにカメラを引き渡し、貸金返還債務の返済期限は平成28年9月30日に到来し、時効消滅日である平成29年10月1日以前に相殺滴状となっていることから、Yの相殺が認められることになるからである(508条)。

第4設問4

 本件では、弁済の直接の証拠である領収書がないことから、間接証拠から間接事実を推認することによって、弁済の事実が認められることを主張する。

 まず、弁護士Pがその成立の真正を認めている本件通帳によると平成28年9月28日と同月29日にそれぞれ50万円を引き出していることから確定できる。これは、Yの供述である「前々日と前日に銀行預金口座から引き出した」とする部分と一致する。そこで、100万円をXに渡しました。」とのYの供述から、YがXに100円を渡したことが推認できる。

 次に、弁護士Pがその成立の真正を認めている本件住民票によると、平成29年8月3日にYが引っ越したことが推認できる。そこで、返済して1年近く経っておりXからそれまで何ら返済等を要求されていないことから、引っ越しの際に領収書を処分することも不合理とはいえず、領収書は初めからなかったとはいえない。

 さらに、Xが返済期限から1年経ってから、急に返済を求めたのは、Yが「Xが同窓会費を使い込んだこと」を「他の幹事達の面前で」「指摘」し、Xが「幹事を辞任した」ため、Yを恨んで返済を求めているという説明に合理性が認められる。

 以上を考慮すると、YはXに対して100万円を弁済したと認められる。

                                     以上

 評価:A

 

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一般教養 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

 再配分とは、資源と富のより公正な配分のことである。これは、富や資源の偏在や一極集中を是正し多数者へこれらを分配するためである。このように、再配分には結果的に平等を求めるという特徴がある。この再配分の例として、累進課税があげられる。これは、多額の所得者には多く課税し、少額の所得者には課税を少なくするものである。

 一方、承認とは、差異を肯定的に扱う世界のことである。これは、差異を差異のまま認めることを求めるものであるから、平等を求めない点に特徴がある。この承認の例としては、同性愛者があげられる。同性愛者の存在をそのまま認めてもらうことがこれにあたる。また、心と体の性別が異なる場合もこれにあたる。

 以上のように、再配分は、平等を求める点に特徴があるのに対し、承認は、同性愛者に男性は女性を愛し、女性は男性を愛すべきとするような平等を求めないで、差異を差異のまま認めることを求める点に特徴がある。

第2設問2

 筆者の見解の論拠としては、社会正義の実現実現のためには、「再配分」が必要とされる場面と「承認」が必要とされる場面が異なるという点にあると考えられる。私は、筆者の主張に賛成する。理由を以下述べる。まず、社会正義の実現のために、再配分が妥当でない場面がある。例えば、先ほどの同姓愛者の場合に、同姓愛者に、男性は女性を愛し、女性は男性を愛するように分配することが正義に結びつくことにはならない。また、心と体の性別が異なる場合もこれにあたる。次に、差異を差異のまま認めることが妥当でない場面もある。例えば、富や財産の格差が大きい場合にこれをそのまま認めると貧しい者の生存そのものが失われる恐れが生じてくる。このような場合は、再配分が必要となるのである。以上のように、社会正義の実現のためには「再配分」が必要な場面と「承認」が必要な場面があることから、そのいずれか一方では充分ではないのである。

                                    以上

評価:B 

 

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刑事訴訟法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

1下線部①について

 本件行為は、所持品検査として適法か。まず、所持品検査は、職務質問の効果をあげる上で有効性が認められるから、所持品検査は、職務質問に付随して認められると解する(警察官職務執行法2条1項)。

 もっとも、所持品検査は、任意であるから原則として相手方の承諾が必要であり、承諾がない場合には、必要性、緊急性、相当性が認められる限りで所持品検査が認められると解する。

 本問では、「凶器を使用した強盗等犯罪が多発してい」たことから、凶器等を探すため、必要性、緊急性が認められる。

 また、Pは、「甲のシャツの上からへそ付近を右手で触った」だけであり、服の中に手を入れたりしていないことから、相当性も認められる。

 以上から、①の行為は適法である。

2下線部②について

 ②の所持品検査は適法か。まず、前述の通り、必要性、緊急性は認められる。では、相当性は認められるか。まず、「Qが背後から甲を羽交い締めにして甲の両腕を腹部から引き離」していることは、実質的に逮捕にあたる。さらに、「Pが、甲のシャツの中に手を差し入れて、ズボンのウェスト部分に挟まれていた物を取り出した。」という点は、捜索としての身体検査にあたる。したがって、令状主義に反する行為であるから、相当性は認められない。

 以上から、②の行為は違法である。

第2設問2

 本件覚せい剤は違法収集証拠にあたり証拠禁止といえ、証拠能力が認められないのではないか。

 まず、本件覚醒剤は、甲の現行犯逮捕と逮捕に基づく差押えによって得られたものであるが、これらはいずれも適法である(220条1項2号)。

 もっとも、所持品検査が違法であることから、かかる違法が承継されないか、違法性の承継が問題となる。

 思うに、手続きの早期安定から違法性が承継されないのが原則である。もっとも、①同一目的を有し、②一連の手続きといえる場合には、強い因果性が認められるから、かかる場合には例外として違法性の承継が認められると解する。

 本問では、Pは、「規制薬物等犯罪に関わる物を隠し持っている可能性があると考え」ていたから、薬物犯罪の犯人の検挙という①同一の目的を有していたといえる。また、所持品検査による覚醒剤の発見、現行犯逮捕、逮捕に基づく差し押さえは、②一連の手続きといえる。

 以上から、所持品検査の違法が、覚せい剤の差し押さえに違法性が承継される。

 では、本件覚醒剤は、違法収集証拠にあたるか。

 思うに、違法収集証拠にあたるかは、令状主義の潜脱する重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑止の見地から妥当でないといえるかで判断すべきと解する(199条、218条1項)。

 本問では、Qの行為は、実質逮捕といえ、またPの行為は、捜索の身体検査にあたるもので、かかる行為を所持品検査として行なっていることから、令状主義を潜脱する重大な違法があるといえる。また、本件覚醒剤を証拠として許容すると同じような所持品検査が繰り返される恐れがあることから、将来の違法捜査抑止の見地から妥当でないといえる。

 したがって、本件覚醒剤は違法収集証拠にあたる。よって、本件覚せい剤は、証拠禁止にあたるから、本件覚醒剤に証拠能力は認められない。

                                     以上

 評価:E

 

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刑法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1 甲の罪責について

1業務上横領罪の成否について

 甲が、500万円を自らの借入金の返済に充てた行為について、業務上横領罪が成立しないか(253条)。

 まず、「業務上」とは、社会生活上の地位に基づき反復・継続する業務で物の保管・占有を内容とする業務をいうところ、甲は「投資会社を立ち上げ」、その会社による投資のみに充てるため500万円を預かっていることからこれにあたり、「業務上」といえる。

 次に、甲は、「500万円を甲名義の定期預金口座に預け入れ」ていたことから、「占有」が認められる。

 また、500万円は金銭であるが、Vの物といえ「他人の物」といえる。なぜなら、使途が決められている金銭は、委託者に所有が認められるからである。

 さらに、「横領」とは不法領得の意思の発言行為をいうところ、不法領得の意思とは、委託の趣旨に反して所有者でなければできない処分をする意思をいう。

 本問では、甲は、預かった500万円を「自らの借入金の返済に充て」ていることから、委託の趣旨に反して所有者でなければできない処分をする意思があったといえ、「横領」が認められる。

 以上より、甲に業務上横領罪が成立する。

2詐欺罪の成否について

 甲が、「証書を紛失してしまった。」などと嘘の話をした行為について、詐欺罪が成立するか(246条1項)。

 まず、A銀行B支店に対し、「定期預金を解約したい。」「肝心の証書を紛失してしまった。」などと嘘の話をした行為は、処分行為に向けられているといえ、欺罔行為にあたる。そして、「Cは、甲の話を信用し」て定期預金証書の再発行をして500万円を交付していることから、錯誤、処分行為、財物の移転が認められる。この点、定期預金証書の財物性が問題となるが、定期預金証書によって預金の払い戻しが可能となるのであるから、定期預金証書に財物性が認められると解する。また、定期預金証書と500万円について、A銀行に損害が認められる。

 以上に相当因果関係が認められ、故意も認められる。

 以上より、甲に、定期預金証書と500万円について、それぞれ詐欺罪が成立する。

3 2項強盗罪の成否について

 甲が、サバイバルナイフをVの目の前に示しながら、「今すぐここで念書を書け。」と言った行為に、2項強盗罪が成立するか(236条2項)。

 まず、甲が、「サバイバルナイフを各々手に持ってVの目の前に示し」た行為は、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行にあたる。

 その結果、Vは、「本当に刺し殺されてしまうのではないかとの恐怖を感じ」て、「甲とVの間には一切の債権債務関係はない」という内容の念書を作成しているから、「財産上不法の行為を得」たといえる。

 したがって、甲に2項強盗罪が成立する。

4強盗罪の成否について

 乙がVの財布から10万円を抜き取った行為について、甲に強盗罪の共同正犯が成立しないか(236条1項)。

 まず、乙は、甲に対し、「迷惑料の10万円も払わせよう。」と持ちかけたところ、甲は、乙に対し、「もうやめよう。」と言っているから、現場共謀は成立していない。

 では、2項強盗の際の共謀が及んでいないか、共謀の離脱が問題となる。

 思うに、一部実行全部責任の根拠は、相互利用補充関係にあるところ、共謀の因果性が認められなければ、相互利用補充関係が認められないので、かかる場合に共謀の離脱が認められると解する。

 本文では、甲は乙に対し、「やめよう。手は出さないでくれと言ったはずだ。」と言って、甲が用意したナイフを乙から取り上げて立ち去っていることから、当社の共謀に基づく犯行を防いでいるいえ、共謀の因果性は認められない。よって、共謀の離脱が認められる。

 以上より、甲に強盗罪の共同正犯は成立しない。

5罪数

 以上より、甲に、①業務上横領罪、②定期預金証書に対する詐欺罪、③ 500万円に対する詐欺罪、④2項強盗罪が成立する。そして、②と③が観念的競合となり(54条1項前段)、これと①と④が併合罪となる(45条前段)。

第2 乙の罪責

1業務上横領罪の成否について

 乙は、「Vに無断で自らへの返済金に流用したという事実は全く知らなかったのであるから、乙に共謀が認められず、乙に業務上横領罪の共同正犯は成立しない。

2 2項強盗罪の共同正犯の成否について

 乙は、甲に対し、Vを刃物で脅して念書を書かせ、債権放棄をさせることを提案し、甲の了承得ているから、乙に共謀が認められ、乙に2項強盗罪の共同正犯が成立する(60条、236条2項)。

3 1項強盗罪の成否について

 乙が、V所有の財布から10万円を抜き取った行為について、1項強盗罪が成立する。なぜなら、暴行は財物奪取に向けられている必要があるが、既に発生している犯行抑圧状態を利用して財物奪取が行われた場合には、実質的に財物奪取に向けられた暴行があったといえるところ、乙は恐怖のあまり身動きできないでいるVの目の前で、Vの財布から10万円を抜き取っていることから、既に発生している反抗抑圧状態を利用して財物奪取が行われたといえるからである。

4罪数

 以上より、乙に①2項強盗罪の共同正犯、②1項強盗罪が成立し、併合罪となる(45条前段)。

                                     以上

評価:B

 

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民事訴訟法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

 本件絵画の売買契約について、代金の一部の100万円が支払われていることから、売買契約の成立自体に争いはない。問題は、契約の当事者がYか株式会社Zのどちらかであるかにすぎない。したがって、Y及び株式会社Zに対する請求相互の関係は、非両立の関係にあるといえる。

 そこで、弁護士L1は、主観的予備的併合という手段をとることが考えられるが、これは認められるか。主観的予備的併合とは、主位的被告への請求が認められないことを解除条件として予備的被告への請求が審理されるものである。このように、予備的被告に著しく不安定な地位に立たせるものであるから、主観的予備的併合は認められないと解する。

第2設問2

1結論

 Xは、後訴で、Yを被告とする訴訟の判決の効力を用いることが可能である。

2理由

 Xが株式会社Zに訴訟告知をすると株式会社Zが参加しなかった場合においても、参加することができた時に参加したものとみなされ、株式会社Zに46条の効力が及ぶ(53条4項)。そして、46条の「効力」とは、共同して訴訟追行した者が敗訴した場合に、敗訴者間で敗訴責任を分担する参加的効力をいう(46条柱書)。そして、参加的効力は、敗訴者間において、判決の理由中の判断についても及ぶ。

 本問では、XY間の売買契約が成立していないという判決の理由中の判断が後訴に及ぶことから、Xは、後訴で、Yを被告とする訴訟の判決の効力を用いることが可能となるのである。

第3設問3

 前述のように、本件絵画の売買契約において、Y側から100万円は支払われていることからすると互いに契約成立自体は認めているといえる。そして、問題は、契約当事者がYか株式会社Zかのみである。そうだとすれば、併合を分離すると当事者がYの場合も株式会社Zの場合とも否定される場合や逆に両方とも成立する場合が生じる可能性があり、判決が矛盾する恐れがある。したがって、このような矛盾を生じる恐れがあることから、分離は違法となる。

 以上のような事情が主張の根拠である。

第4設問1に以下を追加する。

 Y及び株式会社Zに対する請求は、38条後段の要件を満たす。

 また、Y及び株式会社Zは、最初から訴えなければ原告適格が認められない固有的必要的共同訴訟にはあたらないといえる。

                                     以上

 評価:F

 

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商法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

 株主Dは、甲社の株式1万株を有しており、総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有し、Dの請求は、平成29年4月10日に行われており、本件株主総会日である平成29年6月29日の8週間以上前であるから、303条2項の要件をみたす。したがって、甲社は上記4の議題及び議案の要領を記載しなければならないのが原則である(299条1項)。

 もっとも、その後、甲社が丙社に対して募集株式を発行し、丙社を定時株主総会における議決権を行使できる者と定めたことによって、株主Dは、議決権の100分の1以上という要件をみたさなくなった。このような場合、甲社が4の議題及び議案の要領を記載しなかったことは妥当であるか。 

 この点、たしかに、甲社には資金調達の目的があった。

 しかし、株主提案権の要件をみたした後に、会社の行為によって株主提案権が認められなくなるとすると、株主提案権を認めて株主の保護を図った趣旨を没却することになってしまう。したがって、甲社が本件株主総会の招集通知に4の議題及び議案の要領を記載しなかったことは妥当でない。

第2設問2

1損害賠償責任の有無

 Bは丁社の全部の持分を有し、Bが丁社を代表して、甲社と本件賃貸借契約を締結しているから、利益相反取引の直接取引にあたる(356条1項2号)。そして、「本件賃貸借契約」の締結に当たり、「甲社は、会社法上必要な手続きを経ていた。」ということから、かかる利益相反取引について甲社の取締役会の承認を得ていたと考えられる。そこで、Bは423条1項に基づいて損害賠償責任を負わないか。

 まず、本件賃貸借契約の賃料は周辺の相場の2倍であるから、賃料1ヵ月分の300万円の半額である150万円の12か月分について、甲社に損害が生じている。

 では、Bは、「任務を怠った」といえるか、善管注意義務違反の有無が問題となる.。

 この点、たしかに、甲社は、「本店所在地付近においてトラックの駐車場用地を確保する必要が生じたが、甲社は適当な土地を見つけることができない状況にあり、「甲社の事業の都合上、本店所在地近辺における駐車場用地の確保が急務であった」ところ、丁社の保有する土地が駐車場用地として適当であったことからすると、Bに善管注意義務違反はないとも思える。

 しかし、「賃料の決定に際して」「Bの意向を尊重する姿勢をとっていた」ことからすると、Bは、かかる甲社の事情を利用していたといえる。したがって、Bに善管注意義務違反が認められ、「任務を怠った」といえる。

 以上より、Bは、損害賠償責任を負う。

2損害賠償責任の額

 まず、甲社の損害は、150万円の12ヵ月分であるから、1800万円である。

 もっとも、Bは、甲社と425条1項の最低責任限度額を限度とする旨の契約を締結している。

 そこで、Bの1年間の報酬である600万円の4倍である2400万円が控除される(会社法施行規則113条1号、会社法425条1項1号ロ)。

 したがって、Bの甲社に対する損害賠償責任の額は、0円である。

                                     以上

評価:D

 

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