最後の予備試験

平成31年の予備試験を最後の予備試験とするために再現答案を晒すブログです。

商法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

 株主Dは、甲社の株式1万株を有しており、総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有し、Dの請求は、平成29年4月10日に行われており、本件株主総会日である平成29年6月29日の8週間以上前であるから、303条2項の要件をみたす。したがって、甲社は上記4の議題及び議案の要領を記載しなければならないのが原則である(299条1項)。

 もっとも、その後、甲社が丙社に対して募集株式を発行し、丙社を定時株主総会における議決権を行使できる者と定めたことによって、株主Dは、議決権の100分の1以上という要件をみたさなくなった。このような場合、甲社が4の議題及び議案の要領を記載しなかったことは妥当であるか。 

 この点、たしかに、甲社には資金調達の目的があった。

 しかし、株主提案権の要件をみたした後に、会社の行為によって株主提案権が認められなくなるとすると、株主提案権を認めて株主の保護を図った趣旨を没却することになってしまう。したがって、甲社が本件株主総会の招集通知に4の議題及び議案の要領を記載しなかったことは妥当でない。

第2設問2

1損害賠償責任の有無

 Bは丁社の全部の持分を有し、Bが丁社を代表して、甲社と本件賃貸借契約を締結しているから、利益相反取引の直接取引にあたる(356条1項2号)。そして、「本件賃貸借契約」の締結に当たり、「甲社は、会社法上必要な手続きを経ていた。」ということから、かかる利益相反取引について甲社の取締役会の承認を得ていたと考えられる。そこで、Bは423条1項に基づいて損害賠償責任を負わないか。

 まず、本件賃貸借契約の賃料は周辺の相場の2倍であるから、賃料1ヵ月分の300万円の半額である150万円の12か月分について、甲社に損害が生じている。

 では、Bは、「任務を怠った」といえるか、善管注意義務違反の有無が問題となる.。

 この点、たしかに、甲社は、「本店所在地付近においてトラックの駐車場用地を確保する必要が生じたが、甲社は適当な土地を見つけることができない状況にあり、「甲社の事業の都合上、本店所在地近辺における駐車場用地の確保が急務であった」ところ、丁社の保有する土地が駐車場用地として適当であったことからすると、Bに善管注意義務違反はないとも思える。

 しかし、「賃料の決定に際して」「Bの意向を尊重する姿勢をとっていた」ことからすると、Bは、かかる甲社の事情を利用していたといえる。したがって、Bに善管注意義務違反が認められ、「任務を怠った」といえる。

 以上より、Bは、損害賠償責任を負う。

2損害賠償責任の額

 まず、甲社の損害は、150万円の12ヵ月分であるから、1800万円である。

 もっとも、Bは、甲社と425条1項の最低責任限度額を限度とする旨の契約を締結している。

 そこで、Bの1年間の報酬である600万円の4倍である2400万円が控除される(会社法施行規則113条1号、会社法425条1項1号ロ)。

 したがって、Bの甲社に対する損害賠償責任の額は、0円である。

                                     以上

評価:D

 

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