最後の予備試験

平成31年の予備試験を最後の予備試験とするために再現答案を晒すブログです。

民法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

1設問前段について

(1)①について

 AのC に対する請求の根拠は、安全配慮義務違反に基づくものである(415条前段)。安全配慮義務とは、特別の接触した関係に入った場合において、使用者側が被用者側の生命、身体等の安全に配慮する義務のことである。そこで、当事者が特別に接触した関係に入った場合には、使用者側に安全配慮義務が認められると解する。

 本問では、Aは、「Cが雇用する従業員」「と共に解体作業に従事し」「 C は、 A 及び B に対し、建物解体用の重機、器具等を提供し、Cの従業員に対するのと同様に、作業の場所、内容及び具体的方法について指示を与えていた。」ことから、Aは、実質的には、Cの従業員として働いていたといえ、当事者が特別に接触した関係に入った場合にあたる。したがって、Cに安全配慮義務が認められる。

 そして、Cは本件事故を防ぐための命綱や安全ネットを用意していなかったことから、Cに安全配慮義務違反が認められる。

(2)②について

 AのCに対する請求の根拠は、客観的注意義務違反に基づくものである(709条)。客観的注意義務違反は、通常有すべき注意義務を怠った場合に認められると解する。

 本問では、建築業を営むCには、工事の際に事故を防ぐための注意義務が認められる。しかし、Cは、本件事故を防ぐための命綱や安全ネットを用意していなかったのであるから、通常有すべき注意義務を怠ったといえる。したがって、Cに客観的注意義務違反が認められる。

2設問後段について

(1)時効について

 まず、①の請求の消滅時効期間は、10年間である(167条1項)ところ、②の請求は3年間である(724条前段)。なお、弁護士Eが訴えを提起したのが、平成29年6月30日であるところ、事故は平成26年2月1日に起きていることから、時効消滅しているように見えるが、Aは、事故で記憶を失っていたため本件事故の経緯をしたのは知ったのは、平成26年10月1日であり、この日が「損害及び加害者を知った」といえ、3年が経過していないことから、時効消滅していないといえる。

 以上から、時効に関しては、①が有利である。

(2)証明責任について

 まず、①の請求については、AがCの安全配慮義務違反の立証責任を負う。次に、②の請求について、AがCの客観的注意義務違反の立証責任を負う。

 以上から、証明責任については、 ①と②のどちらが有利であるかは断定できない。

第2設問2

1㋐について

 まず、離婚意思は、届出意思で足りることから、本件離婚は有効である(763条、765条1項)。したがって、離婚が有効であるから、CからFへの財産分与も有効である。

 Eは、以上のように回答するのが適切である。

2㋑について

 Aは、CからFへの財産分与を詐害行為取消権を行使して取り消すことが考えられるが、財産分野は一身専属的なので取り消せないのが原則である(424条1項)。

 もっとも、財産分野に仮託してなされた場合には、例外として取り消せる。

 本問では、CはFに「このままでは本件土地及び本件建物を差し押さえられてしまう」「Fに本件土地及び本件建物の全部を財産分与し、確定的にFのものとした上で、引き続き本件土地建物で家族として生活したい。」と述べているから、差し押さえを免れるために財産分与したといえ、財産分与に仮託してなされたといえる。

 そして、Cは、「本件土地及び本件建物の他にめぼしい財産を持っていなかったことから、無資力といえる。

 また、財産分与は、本件事故の後の平成29年7月31日である。さらに、CはFに「本件建物は本来夫婦平等で分けるべきものだが」と述べており、Cに害意が認められる。したがって、財産分与の詐害行為取消権が認められる。

 そして、「本件土地はCがFとの婚姻前から所有していたもの」であるから、本件土地は全部取り消すことができる。

 Eは、以上のように回答するのが適切である。

                                    以上

評価:C

 

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行政法 平成30年 予備試験 論文 再現

第1設問1

1本件勧告について

 「行政庁の処分その他公権力の行為に当たる行為」とは、公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、その範囲を確定することが法律上認められているものをいう(行政事件訴訟法3条1項)。そして、処分性が認められるかは、①公権力性、②直接具体的法的効果の有無で判断される。

 まず、本件勧告は、Y県消費生活条例に基づきY県知事が行っているから、①公権力性は認められる。

 では、②直接具体的法的効果性は認められるか。この点、Y県は、本件勧告には強制力がないし、「勧告に従わなかった場合」や「公表がされた後も不適正な取引行為を継続した場合に、当該事業者に罰則等の制裁を科する規定は存在しない。」ことから、②は認められないと反論することが考えられる。

 しかし、後述のように本件公表に処分性が認めるところ、公表は勧告に従わない時になされるものであるから、勧告は公表の前提条件である(Y県消費生活条例(以下、条例とする) 50条)。したがって、本件勧告は、直接国民の権利義務を形成するといえ、②直接具体的法的効果性が認められる。

 よって、本件勧告に処分性が認められる。

 Xは、以上のような主張をすべきである。

2本件公表について

 本件公表に処分性が認められるか。まず、①公権力性は認められる。

 では、②直接具体的法的効果性は認められるか。この点、公表によって、Xの売上が落ちる可能性があり、経営に深刻な影響が及ぶ可能性がある。また、公表によってXの信用が失墜すれば融資が停止される可能性があることから、直接国民の権利義務を形成するといえ、②直接具体的法的効果が認められると解する。

 これに対しY県は、いずれの可能性も事実上の効果にすぎないと反論することが考えられる。

 しかし、あくまでも公表がきっかけとなるのであるから、②直接具体的法的効果が認められることに変わりはないといえる。

 よって、本件公表に処分性が認められる。

 Xは、以上のような主張をすべきである。

第2設問2

1 まず、Xの従業員が、(ア)「水道水」「は健康に有害ですよ。」、(イ)「人助けだと思って買ってください。」と述べたことは、条例25条4項にあたらないとXが主張することが考えられる。

 これに対し、Y県は、(ア)は、「消費者を威迫して困惑させる方法」にあたり、(イ)は、「心理的に不安な状態」にあたると反論することが考えられる。

 この点、水道水に含まれる塩素は多量に摂取すると体に有害であることから、(ア)は、「消費者を威迫して困惑させる方法」にあたらないといえる。また、「人助けだと思って買ってください。」と述べても相手方が不安な気持ちになるとは限らないから、「心理的に不安な状態」にあたらないといえる。

2 次に、Xは、本件の勧誘をしたのは従業員の一部にすぎず、Xの行為とはいえないと主張することが考えられる。

 これに対し、Y県は、Xには従業員の監督責任があるから、従業員の一部の行為でもXの行為とみなされると反論することが考えられる。

 この点、常に従業員の一部の行為をXの行為とみなすのは不公平であるから、本件勧誘は、Xの行為とはいえない。

3 さらに、Xは、従業員に対する指導教育をしたことから、今後不適正な取引行為はないと主張することが考えられる。

 これに対して、Y県は、指導教育をしたとの証拠はないと反論することが考えられる。

 この点、証拠がないのは、Xに証拠を提示する機会が与えられなかったためであると再反論することが考えられる(条例49条)。

 Xは、本件勧告は違法であることについて、以上のような主張をすべきである。

                                     以上

評価:F

 

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憲法 平成30年 予備試験 論文 再現

 第1 訴えの法律上の争訟性について

 法律上の争訟とは、当事者間の具体的な法律関係又は権利義務関係に関する争いであって、法律の適用によって終局的に解決できるものをいう(裁判所法3条1項)。

 本問では、陳謝の懲罰と除名の懲罰の取消しの訴えであるから、これにあたる。したがって、法律上の争訟性は認められる。

 もっとも、部分社会の法理から司法審査の対象とならないのではないか。思うに、部分社会の構成員の人権保障の見地から、一般市民法秩序に関するものである場合には、部分社会でも司法審査の対象となると解する。

 本問では、処分1は、陳謝の懲罰であり、一般市民法秩序に関するものではないから、司法審査の対象とはならない。

 処分2は、除名の懲罰という議員の地位そのものを失うことから、一般市民法秩序に関するものといえ、司法審査の対象となる。

第2 Xの憲法上の主張

1 19条違反について

 Xは、処分1が19条に反して違憲であると主張することが考えられる。

 まず、自己の意に反して陳謝文を朗読させられない自由は、思想及び良心の自由として19条により保障される。なぜなら、善悪の判断も思想及び良心の自由に含まれるからである。

 次に、懲罰によってかかる朗読を強制されていることから、前述の自由が制約されている。

 では、かかる制約は、公共の福祉の範囲内か違憲審査基準が問題となる(13条後段)。 

 まず、思想及び良心の自由は、人格の核となるものであるから重要な権利である。また、懲罰によって陳謝文の朗読を強制されており、制約は重大である。そこで、目的が必要不可欠で、手段が必要最小限かという厳格な審査基準を用いるべきであると解する。

 本問では、目的は、Dの名誉の回復であるから、目的は必要不可欠といえる。

 では手段はどうか。この点、Dの名誉の回復のためには、戒告というより緩やかな手段もあることから、手段は必要最小限とはいえない。

 以上から、処分1は19条に反し違憲である。

2 21条違反について

 X は、処分2が21条に反し違憲であると主張することが考えられる。

 まず、議員としての活動の自由は、政治活動の自由として「表現の自由」に含まれ、21条1項で保障される。

 次に、Xは除名の懲罰を科されていることから、かかる自由が制約されている。

 では、かかる制約は公共の福祉の範囲内か違憲審査基準が問題となる。

 まず、政治活動の自由は、民主政の過程に参加する自己統治の価値を有する重要な権利である。

 また、 X は除名の懲罰を科されており、議員の地位そのものを失っていることから、制約は重大である。

 そこで、目的が必要不可欠で、手段が必要最小限かという厳格な審査基準を用いるべきであると解する。

 本問では、目的は、議会の名誉の回復・神聖の確保といえ、目的は必要不可欠といえる。

 では、手段はどうか。この点、議会の名誉の回復・神聖の確保のためには、出席停止というより緩やかな手段があることから、手段は必要最小限とはいえない。

 以上より、処分2は、21条1項に反し違憲である。

第3 反論

1 19条違反について

 A市は、陳謝文は「思想及び良心」にあたらない。あたるとしても、Dの名誉を回復させる必要性から、違憲審査基準に合理性の基準(目的が正当で、手段に合理的関連性があるか)を用いて、処分1は合憲であると反論することが考えられる。

2 21条1項違反について

 A市は、議会に対する侮辱を回復して、議会の神聖を確保する必要性から、違憲審査基準に合理性の基準を用いて、処分2は合憲であると反論することが考えられる。

第4 私見

1 19条違反について

 対立点は、陳謝文は「思想及び良心」にあたるか。あたるとして、違憲審査基準は何かである。

 まず、「思想及び良心の自由」とは、世界観、人生観等人格形成の核となるものをいうから、善悪の判断は「思想及び良心の自由」に含まれない。したがって、陳謝文は「思想及び良心の自由」に含まれない。

 以上から処分1は、19条に反せず合憲である。

2 21条1項違反について

 対立点は違憲審査基準である。

 まず、政治活動の自由は、自己統治とともに,、表現活動を通じて人格形成に資する自己実現の価値を有する重要な人権である。また、除名によって、議員の地位そのものが失われていることから、制約は重大である。そこで、厳格な審査基準を用いるべきである。

 本問では、目的は、議会の名誉を回復し、議会の神聖を確保するものであるから、必要不可欠である。

 では、手段はどうか。この点、議会の神聖を確保するためには、出席停止の処分を科して反省を促すことも可能であり、より緩やかな手段があるといえるから、手段は必要最小限とはいえない。

 以上から、処分2は、21条1項に反し違憲である。 

                                     以上

評価:B

 

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はじめに

  このブログは、来年の予備試験を最後の予備試験とすべく、敗因分析のため平成30年の予備試験の再現答案を公開することによって皆さんのコメントをいただきたく作成いたしました。

 再現答案に関して、皆さんから悪い点をご指摘いただければ幸いです。

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 どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m